「妹ちゃんの所行ってたの?」


教室に入ってすぐに、俺の親友の一哉が寄ってきた。

「妹ちゃんって?美明莉のこと?」

「それ以外いなくね?(笑)」

俺が自分の席に座って、机の上に辞書を置くと一哉は、ひとつ前の自分の席に座ってニコニコしながら言ってきた。

「美明莉は妹じゃないよ。」

「はぁ!?じゃぁなに!?」

面倒くさいなぁ…

いつも言ってんじゃんかよ。

「幼馴染み!!」

少しキレ気味で言うと一哉は笑って、

「ごめん、ごめん(笑)」

と言ってきた。


これでも俺らは、親友。

大切な俺の友達だ。

一哉は…かっこいいと思う。

もちろんモテる。

4ヶ月前のバレンタインでチョコを10数個もらってた…


モテる一哉は、実は女子が嫌いだ。

いや、苦手?なのか?

彼女はこれまでいたことないらしいし、好きな人もいたことないらしい。

女子の前では、ニコニコしているけど、俺の前だと本音が出る。

一哉と俺は絶対に隠しごとをしない。

というか…できない?(笑)

本音はすぐ言うし、嘘はつかない。

これ聞いたら親友…いや、大親友だろ?(笑)



昼休みを終え、辞書を使う国語の授業が始まった。

授業の途中で先生がプリントを取りに、教室を出たので、美明莉から借りた辞書をパラパラめくってみた。

…ん?

ふと開いたページに目がとまる。

そこには、“浬” の文字に赤いマーカーの線が入ったもの。

俺の名前…?

気になって、ペラペラと違うページも開いたけど…赤いマーカーの引いた文字なんてなかった。

なんで…

どうして “浬” なんだ?



その瞬間、体が少し熱くなったのを感じた…

でも、気のせいか?…

もぅすぐ、夏だしなぁ〜



授業が終わって先生に押し付けられた雑用をしに、一哉と共に職員室に行った。

その帰り、一哉と美明莉の話になった。


「妹ちゃんって、普段どぅいう服着てんの?」

ちょーどぅでもいい話。

「なんでそんなん聞くの?」

「ん?普段に気になるから?」

なんで疑問形?

「普通に私服。」

普段、制服着てたらおかしいだろ…

「そーいぅんじゃなくて!どーぃう私服?」

なんでそんなこと…

「…あ〜、ミニスカートしか履かない。」

美明莉は、絶対にズボンを履かない。

すごく短いショートパンツは履くけど、膝より下のズボンは絶対履かない。

とは言うものの、ショートパンツは2つしか持ってないらしい。

スカートは夜もそうだ。

「えー!なんか、お嬢様みたい〜!!」

まぁ、確かにそぅかな?

春夏秋冬、いつでもスカート。

美明莉はスカートが似合ってるから、か…可愛いから、いいと思うけど…

「つーか、どんな話ししてんだよ!!」

あ〜!なんか照れてきた…



そんな話をしていたら、遠くに自分の教室が見えてきた。

すると、一哉が突然…

「妹ちゃん!?」

と言ってきた。

「はぁ??」

一哉の視線の先には、なぜか美明莉がいた…

なっ、なんでいるんだ?

何しに来たんだ?

というか、なんで女子に囲まれているんだ?

俺らが驚いていると、美明莉がこちらに気づいたみたいで、もの凄い勢いでこっちに走ってきた。

「浬ぃ〜〜!!!」

「美明莉!?」

…足早っ

美明莉は、息を切らしながら

「よかったぁ〜、浬いたよぉ〜(笑)」



…なんだ?

「どぅしたの?妹ちゃんっ」

すると、一哉が美明莉に話しかけた。

…?

珍しいなぁ…

「あ、そぅそぅ!辞書!!返してくれない??次使うの忘れててぇ…(汗)」

なんだ、そぅいうことか…

「わかった、すぐ持ってくるから待ってて。」

「はーい!」

その場に美明莉と一哉を残して、俺は辞書を取りに行った。


その時、美明莉と一哉がなにを話しているのかも知らずに…


「はい、美明莉。辞書ありがとう。」

辞書を持ってきて、美明莉に渡すと

「ありがとぅ。」

とだけ言って、すぐに帰ってしまった。



そっけない気がする?

ま、時間やばいしなぁ…


当たり前…か?…