好き…それってどんな好き?


家族への好き?


友達への好き?


憧れの人への好き?


ううん、どれも違う。


私の好きは、幼馴染みへの好き。



幼い頃からいつも一緒だったお隣に住んでいる2人の兄弟。


兄は優しくて、気の利く、少し大人っぽい人。(2つ年上)


弟はそれとは正反対で、チャラくて、お調子者。(同い年)


そんな兄弟と幼馴染みの私は、生駒 美明莉。


高校1年生の16歳。


2人のことを誰よりも大切に思ってる。


もちろん好き…大好きだよ…



「す、好きです!!」

「えっ?」

突然のことに頭が混乱する。

「付き合って下さい!!」

昼休みに1つ上の先輩に、学校の裏庭の人気の無いところへ呼ばれて何かと思ったら…告白。

あぁ、またか…

なんでだろう、私この先輩と話したことないし、知りもしないのに…

先輩は、私からの返事をソワソワしながら待っている様子。

顔が赤いから、たぶん恥ずかしいんだと思う…

「ご、ごめんなさい。」

「え…なんで?」

先輩は私の返事に納得していないのか、厳しい顔をしながら聞いてきた。

なんで、ってそんなの…

「わ、私…先輩のことあまり知らないので…」

私は正直なことを言ったけど…やっぱり納得いかないらしい先輩は、じっと私を見つめている。

「あのぉ〜…先輩?」

納得して下さいよぉ。お願いします!

「これから知れば良くない?…」

んん〜〜〜〜…早く教室に戻りたいかもぉ…

「先輩も私のことあまり知らないですよねぇ?」

告白してくる人はいつもこう。私のこと全然知らないのに、付き合って下さい!とか言ってくるの…

少しロマンチストかもしれないけど…私はやっぱりお互いのことをわかり合って、好き同士で付き合いたいなぁ…

なんて、そんなこと言ってたら、一生彼氏出来なそぅだよぉ…(汗)

先輩はずっと黙っていたけど、やっと口を開いてくれた。

「じゃあ、一緒に写真だけ撮らせて。」

え?

この人何言ってるの!?

「えぇ〜(笑)なんで写真なんですかぁ?」

嫌だなぁ、早く教室戻りたいのに…

あれ?

というか、最初と違って先輩の目つきが…変わった?…

「友達に自慢したいんだ、あの美明莉ちゃんと付き合ってるって…」

え?自慢?

それより、付き合わないよ?…

「ご、ごめんなさい、それはちょっと…」

すると先輩は私の腕を強く掴んできた。

痛っ!

「な、なんですかぁ!?」

「なぁ、写真ぐらい良いだろ!?それともなに?違うことしてくれんの?」

い、嫌だ…

私を掴む先輩の手の力が強くなる。

さっきの恥ずかしそうな顔ではなく、怖い顔に変わった先輩。

振りほどこうと思っても振りほどけない手。

「おぃ、なんか言えよ!」

こ、声が出ない…イヤだ!イヤっ!!誰か、誰か助けて!!!

「や、やめて下さいっ」

「美明莉ちゃんになにしてんだっ!!!」

…!?

だ、誰?

私の知らない人。

制服のネクタイの色を見る限り、2年生?

その人は、腰に手を当て、仁王立ちをしていた。

こんな時に失礼かもしれないけど…なんか偉そうだなぁ…なんて。

私がそんなことを思っていると、手を掴んでいた先輩の手が離れた。

「さ、斎藤…(汗)」

あれ?なんか怯えてる?

するといきなり先輩は走り出して、遠くへ行ってしまった。

な、なんだったんだ?

「ごめんね美明莉ちゃん。あいつ、美明莉ちゃんのこと、ずっと好きだったみたいなんだけど、恋愛したことないから、どうしていいかわからなかったんだと思うんだ。だから許してやって。」




斎藤?先輩は深く頭を下げている。

…自分のことじゃないのに…凄いなぁこの先輩。

「別にいいですよ。こんなの慣れてるんで…(笑)」

「え?慣れてる?」

あっ!!

「な、なんでもないです。じゃあ、失礼しますね!さっきの先輩には、許しますので、今後こんなことしてはいけませんっ!と言っておいて下さい。それでは!!」

私は喋りながら走って校舎の中に入って行った。

そんな私を先輩は、じっと見つめていた…


あぁ〜本当なんだったんだろぅ…

気分が凄くブルーだなぁ〜…


私は、裏庭を出て1年の教室に戻ろうと、歩いているところ。

時々、隣を通る男子生徒に声をかけられる。

「美明莉ちゃんだ!今日も可愛いなぁ〜!」

「美明莉ちゃん、こんにちは〜!!」

「生駒さん、お昼もぅ食べた?」

私はそれに軽く返事をして、教室の前に到着した。

ブルーだけど教室に入ったら笑顔!笑顔!!

友達に迷惑かけたくないしなぁ…

はぁ〜、気が重いけど、入らなくちゃね!!


ガラガラガラッ

「みんな、ただい……っ!!!」

ただいま、そぉ言おうとしたの。

でも…

「美明莉、拉致。」

っ!!!

突然腕を引っ張られ、どんどんどんどん教室から離れていく。

なにも言わずに腕を引っ張られながら、走っている。

“彼”の走るスピードが速くて、転んでしまいそう。

1年の教室の端にある階段を上がって、2年の教室を走り抜けて、端にある階段を上がって、着いたところは屋上。

私は息を切らしながら、“彼”の腕に手を伸ばし思いっきりグーパンチ。

「ちょっと、“理久”!!いきなりなにすんのよぉ!!」

そぅ、彼の名前は “白石 理久” 。

私のクラスメートであり、大切な幼馴染みの1人。

「イテッ!!つーかお前走るの遅すぎ。(笑)」

理久は笑いながら、私がグーパンチした腕を抑えている。

あんまり強くやってないし!とか思いながら、私はその場に座り込む。

屋上はラッキーなことに誰も居なくて、気持ちいい風が吹き抜けている。

「それよりも、どぉしたの~?いきなり。ちょー疲れたぁ〜」

私は顔を抑えながら、思いっきり疲れた感をアピールすると、理久は私の隣に座り込んで、顔を除き込んできた。

「悪かったよ、いきなり。…たださぁ~なんかお前元気無かったからよぉ。」

…気づいてたんだ。

話してないし、顔すら見てないのになぁ~…

「あ、ありがとぉ。気づいてくれたんだね…」

理久はいつもこぅ。

私が嫌なことがあったりして、無理やり笑っていても、友達は気づかないのに、理久だけは気づいてくれるの。

「おぅ!…で?なにがあったん?」


私は顔を上げて、理久の方を向き、今あったことを全部話した。


理久にだけは、なんでも正直に言う。

これが私の当たり前。