君は、泣かなかった。
僕の手も、君に触れずじまいになった。
君は、泣かなかった。
僕に触れてほしいはずの君は。
ただ、僕の手を、静かに拒絶した。
「そんなの、知ってた」
君が知っていたことを、僕は知らなかった。
僕の仕草を真似て、嬉しそうにはしゃぐ君も?
無邪気に僕と手をつなぎたがった君も?
僕の隣に座りたがった、わがままな君も?
「泣くかと思った」
僕が知らなかったことを、君は、知らなかった?
君はいつも嬉しそうで。
君はいつも無邪気で。
君はいつも、あんなにも、僕じゃなきゃダメだったけれど。
「泣かないよ」
原色の光が、ゆらいでいる。
こんなにも、君は泣きそうなのに。
でも、泣かない。
君は、泣かなかった。
「本当に本当に悲しいと、泣けないよ」
君は、少し笑う。
「ずっと、ずっと、悲しかった」
悲しい?君が?
あんなに楽しそうに笑ってた、君が?
「あなたを、好きで」
君が初めて、僕を好きだと言った。
ずっと、知ってたはずなのに。
今、やっと知った気がするのは、何故だろう?
「そんなの、知ってた」
僕は、君の真似をする。
そうか。