君は、両手で涙を拭う。
それだけが、僕の知っている君。
「彼女に出逢わなかったら、ずっと一緒だった?」
パステルカラーの優しい君。
君はいつから、僕を許し始めたの?
いつから、僕を信じてなかったの?
「彼女と出逢わないなんて……ないよ」
いつから、その優しさが嘘だったの?
僕はいつから、その嘘に気づけずにいたの?
「彼女に出逢わない僕は、いない」
さようなら。
さようなら。
僕は、君に嘘をついてはいけなかったのに。
君も、僕に嘘をついてはいけなかったのに。
いつの間にか、本当のことなんて、わからなくなってしまったね。
あんなにも一緒にいたのに。
優しい君が、僕を許してしまうことにだけは、どうしても気づけなくて。
許してはいけないことに、君は、どうしても気づけなくて。
「それでも、君に会えて、よかった」
僕の手は、もう一度だけ、君に触れた。
僕は、ただのひとりよがりで、君を知ってるつもりだったわけじゃないよね?
君が、僕をわかってくれてた時は、確かにあったよね?
君と僕は、信じ合えてたよね?
誰よりもそばにいると、君も感じていてくれたよね?
君も。
僕を愛してくれているよね?
君は笑った。
あの、パステルカラーの空気をいっぱい放ちながら。
僕は、君から、手を離す。
思った通りに。
僕の、知っていた通りに。