今ここで、僕が、うん。とうなずけば。
君もきっと、何も言わずに。
あの、パステルカラーの笑顔だけを僕に残して。
僕が、君の髪に触れる手を離して。
そうゆう結末。
きっと、そう。
僕は知っている。
きっと君も知っているはず。
だから、後悔はしないよ。
知っててこっちを選んだ。
ごめんよ。
彼女に会えなくなるのだけは、どうしても選べない。
君のそばにいてあげることを、選べない。
だって、彼女が悲しむから。
君をどんなに傷つけても。
僕は、彼女を悲しませたくないんだ。
「もう、二度と、会わない」
僕は、君のやわらかい、優しい髪から手を離す。
これは、僕の意志。
誰かの為に言っているわけでもなく。
誰かに言わされているわけでもなく。
さようなら。
パステルカラーの君。
二度と、あの優しい空気に包まれることができなくても。
もう、いいんだ。
「どうして?」
君が言った。
何も言わないはずの君が、言った。
僕に投げかける質問などないはずの君が、僕に言った。
僕のことで、知らないことは何ひとつないはずの、君が。
どうして、と言った。
どうして?こっちのほうこそ、どうして?だよ。
僕は、こんな君は、知らない。
「君が、僕に、どうして?なんて聞くことはないはずだよ?」
君の涙は、まだ止まらない。
「そんな君は、知らない」
けれど僕は、君には触らない。
本当は今でも、君の髪に触れたいけれど。
手が、動かない。
「あなたが先に、知らないあなたになったのに?」