これだけは嘘じゃないよ。
決して。
決して君を、嫌いになったわけじゃあない。
君を嫌いになることなんか、決してない。
ないよ。
だって、どれほど長い時間、君を好きだったと思う?
君の、パステルカラーの空気。
僕の周りを取り囲む、優しい色。
初めてそれに魅せられてから、ずっと。
君が、僕を好きになってくれてからも、ずっと。
もう、ずっと。
僕の持つ、原色の光でさえもかすむ程。
混じり気のない、パステルカラー。
本当は、なくしたくなんかないよ。
けれど、僕はもう、これ以上。
君を苦しめたくないし。
僕も、苦しみたくはないし。
君を裏切り続けられないし。
君を、裏切りたくない。
君が無理矢理笑ってくれるのがつらいし。
僕ももう、上手に笑えない、し。
もう、本当にこれ以上、君に嘘をつけないよ。
「好きな子がいるんだ」
君は、ずっと知ってたんだろうけど。
僕のことで、君にわからないことはないはずだから。
君は、泣いた。
キレイな、キレイな、涙を流した。
僕は、今までずっとそうしてきたように、君の髪を撫でた。
もう、これできっと最後になるだろうから。
君に触れるのでさえ、もったいないよ。
君はいつもと同じように、僕の手をはらうフリをした。
そして、いつもと同じように、両手で涙を拭う。
「終わりなの?」
君は言った。
僕は、君が、別れたいの?とは言わないことを知っていた。
君のことで、僕がわからないことはないから。
そして、君が、僕が決して別れたいと思ってるわけじゃあないことを知っていることも知っている。
こんなにも。
こんなにも、君と僕はわかりあえるのに。
こんなにも信じ合えるのに。
こんなにも、そばにいるのに。
…でも、ダメなんだ。
君と一緒にいたら、彼女が悲しむから。
こんなにも、わかりあえた君だから。
こんなにも、信じ合えた君だから。
こんなにも、そばにいた君だからこそ。
君には、もう、会えない。
君だけには、もう、会えない。