「僕は…」
思い切って言葉を吐く。
いつかは、言わなければならなかった。
苦しかった。
僕の中にたまった言葉が、ヘドロになる前に。
「僕は……。本当の君を………知らない」
すべてが存在しないんじゃないか。
ああ、ここに君はいないんじゃないかって。
ずっと、ずっと思ってたんだよ?
だって、君は、とっても上手に嘘をつけるのかもしれないから。
「知らないんだよ?」
こんなことを言っては、君をなくしてしまうのかもしれない。
けれど、君は、本当にそこにいるのかい?
「あなたは、本当のアタシしか、知らないわ」
君は、それでもなお、僕を見つめ続けている。
ああ。
どうして。
こんなにも、嘘がないと思えるのに。
「いつか、あなたも、それを知ってくれるといいのに」
君は、僕の頬を優しく触った。
本当に、そんな日が来る?
来ない。来ない。来ない。
……来ないよ。
いつまで、いつまで、いつまで待ったって。
いったい、どれだけ待てばいい?
無理だよ。
わかる。わかるよ。
わかっちゃうんだよ。
何も言わない、僕のために。
ねぇ、泣いてくれてるの?
泣いてくれてるの?
「馬鹿だな」
僕も君の頬に触れる。
僕の手のひらが染まるほどの、純粋な、桃色。
なんだ。
そうか。
最初からこうすればよかったんだね?
「そっちのほうこそ」
そう言って笑った君が、本当に本当に愛しくて。
この僕の気持ちには、なんの嘘もなくて。
あと、もう少しだけ、がんばれる気がしてしまって。
あきらめきれずにいるんだよ。
あきらめきれずにいるんだね?
会えない君を、それでもまた、絶対会える君を。
僕は愛していくんだね?
そんな僕が、愛しいかい?
それなら、迷わず抱けばいい。
何も……なんにも。
迷うことなく。