ねぇ、僕はずっと、気づかないふりをしていたんだ。
でも、もう、それも無理みたいだよ。
やっぱり僕も、どうやら黒くなってしまうんだ。
あと、少し。
もう少しで。
だから、その前にどうしても、君に言っておきたいことがあるんだ。
僕が、黒くなってしまう前に。
どうしても。
何故なら、僕のこの記憶はきっと、なくなってしまうだろうから。
僕のこの心も一緒に、変わってしまうだろうから。
君は、僕を愛してなどなかったと言った。
僕を愛することはできないと言った。
悲しくて悲しくて、どうしようもなかったよ。
僕の涙はもう、止まることを忘れていた。
それでも君を愛していたのだろうか。
君を嫌いになれたらよかったけど、僕にはできなかった。
君はとても黒かったけれど。
どうしてだろう。
まぶしくて。
僕はただ、君をなくしたくなかったんだね。
君をなくした僕を、誰にも見られたくなかったし、それに僕自身も、そんな自分を見たくなかったんだ。
今にして思えば、そんなのはただの自尊心で、愛とかそんな格好いいものじゃなかったと思うよ。
それでも、その時の僕と言ったら、ただ君を愛していると言って、疑わせなかった。
いや、それも本当だったんだと思うよ。
でも、今の僕には、それすら定かだったかどうかわからないんだ。
そして、僕をもう一度抱きしめてくれた、君を。
信じて。愛して。
無理だ。
到底、僕には無理だよ。
怖いんだ。
ひとりでいることも、君といる時でさえ。
怯えてるんだ。
悲しみに。
悲しむことなんて、何もないのかもしれない。
でも君はもしかしたら、僕を哀れんでるだけなんじゃないかと、思うことがあるんだよ。
君の生きたいように生きて欲しいと願う心と、僕の思うがままに生きて欲しいと望む心が、戦ってるんだ。
君が、何も願わないから。
僕は、望み続けることをやめられずにいるんだよ。
わがままに、君を、呪縛するんだ。