「あなたの初仕事の相手が、かの有名なメリーさんとは、かなり大変そうですね」
「……他人事だと思ってえ…」

ずんと沈み込む気持ちを抑えて幽霊を見れば、幽霊は「まあ他人事ですから」と言ってほんわかと微笑んでいた。
この人本当にこういう態度が腹立つな。もう段々慣れてきたとは言え。
はあ、と重い溜め息をついて胸のつかえを少しでも押し出そうとしていると、幽霊との対話が途切れたのを見計らったらしい修ちゃんが口を開いた。

「なあ…さっき、友達がどうのって言ってたが、ありゃどういう意味だ?」
「……それは、えーと」

しまった。そういえばメリーさんにそんなことを言ったような気がする。
当然隣にいる修ちゃんだって聞いてしまうだろうというのをすっかり失念していたのだ。今更になって悔やんだ。あたしの馬鹿。

ミコトのことはまだ話していなかったけど、ここまで巻き込んでしまった以上話すべきなんだろうか。
やっぱりそうしようと決めて、あのさ、と声に出して言おうとしたところで、はっとした。
教室の扉の上に書かれている文字は、一年六組。
あたしたちがいつも使っている教室だった。

「着いたんだ…」