「石坂先生に何かあったのかもしれん、俺も行く」
「えぇ~!?いや、ついでにあたしが探して来るから大丈夫大丈夫!」

そんなことになったらかなり困るから、必死にぶんぶん首を振って訴えたが、修ちゃんは振り向いて少しあきれた顔をして、「ばーか。生徒にもしものことがあったらどうすんだ?」と一蹴する。

傘を片手に取ると、ドアを開けて外に出てしまった。
ああ、もう、どうすれば良いんだろう。
頼みの綱とばかりに幽霊をすがるように見ると、幽霊は肩をすくめた。

「まあ、頑張ってくださいね」

この役立たずが…。
恨みまじりにムスッとした睨みを一つくれてやってから、あたしは車から出る。
真っ黒の傘をさして昇降口に向かおうとしたら、ぐいっと首根っこを掴まれた。

「ほら、今日はこっち」
「ちょ、なんで!?あたしに靴下で歩けとでも?」

あたしの下駄箱とは逆の、修ちゃんの進行方向に引きずられて行きながら、修ちゃんの方を見る。
至って普通の表情で、修ちゃんは言った。

「何かあった時、対処できないだろ?」
「……もう、好きにしてよ…」

せっかく別行動にできると思ったのに。幽霊のアドバイスはもらえそうにないな、と思って、ちらっと背後を振り向かずに見やると、幽霊は明らかに笑いを堪えていた。

(この亡霊め…いつか思い知らせてやる!)

まあ、一応命の恩人なんだけどさ……むかつくものはむかつくんだよ!