その幽霊の態度が意外で、あたしは不覚にも言葉を見失ってしまった。
だって生前の行いを悔いている死者に何を言えるというのだ。生きている、まだいろんなことをやれる、またやり直せるあたしが。
何を言っても、宙に浮いたような、安っぽいセリフになってしまうことは目に見えている。
でも急に黙るのも変だろうな、と思った。
だから違う話題を探して、そしてあたしは初めて一番基本的な質問を彼にしていないことに、初めて気付いた。
まあ、元々向こうが一方的に話して来たようなものだけど。
「そういえば、あなたの」
名前は、と言いかけたところでバンと勢いよく扉が開いたのであたしは飛び上がるほど驚いた。
幽霊も軽く身を引いたから、多分びっくりしたんだろう。ちょっといい気味だ。
「わっ、お母さん!?」
ノックくらいしてよね、とドキドキする胸をおさえたところで、ようやくお母さんがかなり深刻そうな表情をしていることに気付いた。
「朝香ちゃん…ミコトちゃんは?帰り一緒じゃなかったの?」
「あ、うん、今日は…」
お母さんはますます険しい顔をする。
ミコトがどうしたの?
嫌な予感にざわつく胸を無意識に押さえるあたしに、お母さんは言った。
「ミコトちゃん、行方不明なんだって」
だって生前の行いを悔いている死者に何を言えるというのだ。生きている、まだいろんなことをやれる、またやり直せるあたしが。
何を言っても、宙に浮いたような、安っぽいセリフになってしまうことは目に見えている。
でも急に黙るのも変だろうな、と思った。
だから違う話題を探して、そしてあたしは初めて一番基本的な質問を彼にしていないことに、初めて気付いた。
まあ、元々向こうが一方的に話して来たようなものだけど。
「そういえば、あなたの」
名前は、と言いかけたところでバンと勢いよく扉が開いたのであたしは飛び上がるほど驚いた。
幽霊も軽く身を引いたから、多分びっくりしたんだろう。ちょっといい気味だ。
「わっ、お母さん!?」
ノックくらいしてよね、とドキドキする胸をおさえたところで、ようやくお母さんがかなり深刻そうな表情をしていることに気付いた。
「朝香ちゃん…ミコトちゃんは?帰り一緒じゃなかったの?」
「あ、うん、今日は…」
お母さんはますます険しい顔をする。
ミコトがどうしたの?
嫌な予感にざわつく胸を無意識に押さえるあたしに、お母さんは言った。
「ミコトちゃん、行方不明なんだって」
