死神女子高生!

お母さんはきょろきょろと部屋全体を見回してから、あたしに、例の黒い虫でもいたの、と訊いた。
例の黒い虫ってゴキブリか。
それも嫌だけど、ある意味この自称幽霊の方が厄介だと思う。

あたしが何も言わないのを肯定と取ったらしいお母さんが、腰に手を当てて呆れたような顔になる。

「何よ、ゴキブリくらいで…初めて見たわけじゃないでしょう。ご近所さまに迷惑よ」
「ゴキブリくらいって!お母さん、ヤツの恐ろしさはもう半端じゃない…」

って、今はヤツの話じゃない。お母さんの肝っ玉の座り具合にはびっくりだけど。
あたしはちらりと幽霊に目をやる。
彼は何も言わずにただあたしたちを傍観していた。

「もう…分かったわ、あとで殺虫剤買って来てあげるから。ね?」

お母さんはあたしがヤツに怯えていると思っているようで、そう優しく言ってあたしの頭を撫でる。
悪いけどお母さんご飯作ってるわね、と言ってお母さんは結局彼には気付かないで戻ってしまった。




あたしは自分の部屋に入って、後ろ手で扉を閉める。
警戒しながら、じっと自称幽霊、もしかすると本当の幽霊かも知れない男を見つめた。

「あなた……本物の幽霊なの?」