「ちょっ…お母さん!!お母さぁーんッ!!変なのがいるぅぅぅ!」
「変なのですか、キツいですねえ。まあ否定はしませんけれど」
あははは…と朗らかに笑うこの男を見ていると一瞬殴り飛ばしたくなったが、何とか堪えて、下に向かって近所迷惑になりそうなくらいのもう一度大声で叫んだ。
「なになに、どうしたの朝香ちゃん!?」
すぐに、お母さんが血相を変えて、おたま片手にぱたぱた走って階段のところまでやってきた。
こっち、こっちと、あたしは半泣きで自分の部屋を精一杯指差す。
お母さんもそれを見て飛ぶように段差を上って、バンッとものすごい勢いで扉を開け放った。
対して、例の自称幽霊は緊迫感の欠け落ちた表情でひらひら手を振って「こんにちは」なんて言う始末だった。
えらく余裕だ。何故だろう。
けれど考える間もなく、すぐにお母さんの視線が男の場所に…――
「何もいないじゃないの」
「え」
お母さんの言葉にあたしは文字通り絶句した。
声が出ないほど驚きながら、お母さんと自称幽霊を交互に見る。
(………今、何て言ったの?)
喉元まで出掛かった言葉は、しかしそれ以上あがってはこない。
まさか、見えない……?
「変なのですか、キツいですねえ。まあ否定はしませんけれど」
あははは…と朗らかに笑うこの男を見ていると一瞬殴り飛ばしたくなったが、何とか堪えて、下に向かって近所迷惑になりそうなくらいのもう一度大声で叫んだ。
「なになに、どうしたの朝香ちゃん!?」
すぐに、お母さんが血相を変えて、おたま片手にぱたぱた走って階段のところまでやってきた。
こっち、こっちと、あたしは半泣きで自分の部屋を精一杯指差す。
お母さんもそれを見て飛ぶように段差を上って、バンッとものすごい勢いで扉を開け放った。
対して、例の自称幽霊は緊迫感の欠け落ちた表情でひらひら手を振って「こんにちは」なんて言う始末だった。
えらく余裕だ。何故だろう。
けれど考える間もなく、すぐにお母さんの視線が男の場所に…――
「何もいないじゃないの」
「え」
お母さんの言葉にあたしは文字通り絶句した。
声が出ないほど驚きながら、お母さんと自称幽霊を交互に見る。
(………今、何て言ったの?)
喉元まで出掛かった言葉は、しかしそれ以上あがってはこない。
まさか、見えない……?
