死神女子高生!


「すみませんあたし急いでるんで!」

あたしはそう言うや否やすぐさま全速力で幽霊さんに背を向けて走り出した。

「あっ、どこ行くんですか!?」

幽霊さんが慌てて声を掛けて来たけど、あたしは返事もしなかった。
もうミコトは待っていられない。今まであたしが生きて来て、最も危ない人に会ってしまったから。

ミコトには悪いけど、明日事情を話して許してもらうことにしよう、と決めて、あたしは靴がびしょびしょになるのも構わずに家まで走り通した。



息も絶え絶えになった頃に、ようやく見慣れた『藤咲』の表札の前に着いた。
自称幽霊が追って来ることもなく、無事に家まで辿り着けて、あたしは心底ほっとした。

肩で息をしながら、玄関の扉を開けて中に入る。
家にはおいしそうな夕飯の匂いが漂っていて、あたしはようやくお腹が空いていることを思い出した。
今日は変なことばっかりだけど、こうしていつもの日常に戻って来れたんだ。

あたしはほっと息をついて、お母さんに「ただいま~」と声を掛ける。
顔を見せた程度だったけど、お母さんはキッチンで野菜を刻みながら、「おかえり」とにっこりしてくれた。
本当にいつも通りだ。

あたしは頬をゆるませながら、トン、トンと軽快に階段を昇っていった。