こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

知力が、二の次?


「どういうことだよ」


知力以外の何で選ぶんだよ。俺には他に何もねぇだろうが。


そんな俺に彼女は一つため息をつきベッドに座ると、涙を拭い空を見上げた。


「…あなたを引き取る一年くらい前、まだ養子を取るか悩んでいたの。悩みながらあの施設に見学に行った時──」



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───


──……




「おとうさん、おかあさん」

「…え?」

「おむかえにきてくれたの?」

「……えっと、」

「あっ!まちがえた!ごめんなさい!」

「あっ!待っ…」





……──


────


─────




「……なんでもないことだったのにね、どうしてかずっと頭から離れなかった。施設自体不慣れで不安だった時、あなたにお母さんって呼ばれたことが単純に嬉しくて。わたしを見つめる綺麗な目が愛しくて。小さな手でわたしの服の裾を掴んだあなたが可愛くて。お父さんも同じ気持ちだった」


たった、これだけ?

これだけで俺を養子に決めたってのか?


…嘘だろ?


「それから施設に通っては隠れてあなたを見てた。可愛くて可愛くて、もうわたし達の中では圭悟を養子にすると決まっていた。でも周りがうるさくてね。どうしようもなく知力のテストを受けさせたら圭悟の出来が良くて、反対してた親戚も文句を言わなくなったの」

「…ありえねぇだろ。よくそんな安い話、作れたもんだな」


どうやって信じろっていうんだよ。あほか。

無理がありすぎる。