こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「起こそうとしてきた緑川を殴ったことがある」

「え゛。それって寝ながら?」

「記憶ねぇからな。金沢にもやったみてぇだし、あいつらは寝てる俺に近寄んねぇよ」

「こ、怖すぎ」


寝てる時でさえ戦っているのか、深瀬くん。

屋上で寝ていた時に殴られなくて良かった…。


「寝てる俺に罪はねえ」

「確かにそうかもしれないけど…。それじゃあ一緒に眠れないね」

「ぶっ─!!!」

「や、でもわたしは大丈夫!ダーリンといられるなら、痛いのは嫌だけど我慢…」

「お前はまたそんなことを恥ずかしげもなく言いやがって…!」

「なにが?普通のことでしょ?」

「はあ?!黙れ!」

「ひどっ…!」


──なんとなく言いづらくて、深瀬くんにお母さんが来ていたことは伝えなかった。

別に嘘をついているわけでもないのに少し胸が苦しかった。


お母さんが来ていたこと、深瀬くんをすごく気にしていたこと、わたしと話したこと、深瀬くんが知ったらどう思っただろう。

言った方が良かったのか、どちらが正しい選択だったのかわからない。


深瀬くんがどうしてお母さんを良く思っていないのか気になるけど、わたしが首を突っ込んでいい話じゃないし、そんな身分でもない。

それこそわたしのせいで余計にこじれたりしたら一生辛いし申し訳ないから、そっとしておいた方がいいよね。

そうだよ、わたしが割り込んでいい話じゃないんだよ。家族のことなんだから。


深瀬くんと、お母さんのことなんだから。