こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

そのまま殴り続ける菊池を誰も止めようとはしない。

盛り上がっていくだけ。


深瀬くんでさえも、動じずに何も口を出さない。


『ルール』や『約束』なんて、この人達にはないに等しいんだ。


「おい菊池ー!おめーだけんなやったら、俺らに来ねーべや!」

「一人で楽しんでんじゃねーよ!」

「ったく、しゃーねーな!おらよ!」


何度も殴りつけた挙げ句最後に深瀬くんに蹴りを入れ、菊池は見物側に回った。


それから同じように、北栄の不良達は順番に深瀬くんを傷つけていった。

目に余るような行為が意図もたやすく繰り返されていく。

見ていられず何度も顔を背けた。


唸り涙を流すしかできない自分を、これほどまでに恨んだことはない。

無力なわたしこそ、傷つけられて当然の立場なのに。


「信じらんねーな。ここまでされて深瀬がマジで手を出さねーなんて」


晋が軽く口角を上げながら呟いた。感心でもしているみたい。


それもそうだ。


深瀬くんは本当に手を出さない。

こんなに汚い奴らが相手でも、驚くほど律儀にルールを守っている。