こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「いらねぇよ!こんなんほっときゃ治…」

「だめ!絶対絶対待ってて!」


駆け足で家に入り、救急箱をめがけ猪突猛進。


急げ急げ!


「咲良?帰ったの?」

「また出る!すぐ戻るから!」


お母さんに顔を向けず、救急箱を持ち外に出る。


「お待たせ─…」


さっきの場所に、ダーリンの姿はすでになかった。


──もう。手当てくらいさせてよ。早すぎだよ。どれだけ短気なのよ。少しも待ってくれないなんて。


救急箱を持ったまま立ち尽くし、わずかに荒くなった呼吸を整える。


──それでも。


あの場を去ろうと言うわたしの言葉を聞き入れてくれた。

わたしを守ってくれた。


前の深瀬くんなら考えられないこと。


それはわたしをかわいそうだとか同情だとか、そう言った類の感情からかもしれない。でも、ほんの僅かでも距離は近づいているはず。


そう思うと口元が緩くなる。明日もまた、楽しみに感じてくる。


家に帰るのも苦痛が和らぐ気がするよ。


今普通でいられるのも、笑顔でいられたのもダーリンのお陰。ダーリンのお陰で、今日も笑っていられたよ。


「…ふ。」


また明日も恋愛ごっこしようね、ダーリン。