こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

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珍しくケンカ一つせず、マンションに帰り、即行でベッドに横たわる。


いつものように、しんと静まる空間に一人きり。

ベッドの横のテーブルにあった小箱に手を伸ばし、残り一本になった煙草をくわえる。


火を付け大きく吸い込み、肺に煙を送る。


頭の中がごちゃごちゃして、胸の中には何かがつっかえている感じがする。


原因は逢川だ。あいつしかいねぇ。


こうも連日つきまとわれちゃ当たり前だ。


でも、それもきっと今日で終わりだろう。あそこまでひでぇことされたら、俺につきまとうどころか恨みすらするだろう。


だから何度も言ったんだ。聞かなかったのはてめぇだぞ。自業自得だ。


…馬鹿な女。きっと、今日でそれも終わり…。


……。


「…」


煙草を吸っても、どうしてかイラつきは微塵も解消されない。


起き上がり吸い終えた煙草を灰皿に押しつけ、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。


冷蔵庫を背にし、喉にビールを流し込んだ。


─少しだけ、もっと早くに俺が出ていって助けてやれば良かったんじゃないかと思う自分がいる。


いくらなんでも、あれほどまでのことを逢川がされる必要なんてなかった。


見つけておいて傍観してる俺は、とことん腐ってる。