「だよな~」

「─てことはあれだな」

「菊池のボンクラが間違えたか、こいつが嘘をついてるか」

「嘘なんてついてないから!わたしは─っ」


──。


「余計なことは言わなくていい。深瀬と関わりあんのか?」

「おめー、嘘なんてつきやがったら、身ぐるみ剥いで海にでも捨ててやっからな」

「その前に俺らの相手でもしてもらうか」


さすが北栄。何から何まで腐ってやがる。


女を殴る男はいけすかねぇ。本当なら、いつもの俺なら、自分が優位になるケンカができると真っ先に殴り込みに行っていた。


──でも。


この時、俺は様子を窺っていた。


逢川はどんな反応をするのか。


さすがに俺と関わろうとすることを止めるのか。


気になり足が動かなかった。


ここまでされてんだ、いい加減もう俺につきまとわなくなるだろ。


こうなったのは、俺が原因なんだから。


「…わたしに何をしたって、深瀬くんはどうもしない。例えわたしが死んだとしても深瀬くんは何も思わないから、深瀬くん狙いでわたしを相手にしたって無駄だよ」