こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「うっぜぇな!いい迷惑なんだよ、ストーカー女!」

「深瀬!お前…」

「つーか緑川!何勝手なことしてんだてめぇ!」

「別にいいだろ。女相手にキレるなんてだっせぇな」

「このやろ…っ」

「だっ!ダーリン!わたし…」

「うるっせぇな淫乱女!」

「いっ、淫乱?!」

「お前みたいな女は色んな男に言い寄ってんだろ!このアバズレが!」


俺に言い寄るってことは、どうせ他の男にも同じようなことしてんだろ!付き合ってもいねぇ俺に、きっ、キスしてくるくらいだもんな!!


「はあ?!そんなわけな…」

「節操なく男に媚び売ってんだろうが!くっだらねぇ!んなことして何が面白ぇんだよ!マジで失せろ!」

「てめぇ!!」

「─やめて」

「──っ」

「「「──」」」


何を思ったか、殴りかかろうとして俺の胸ぐらを掴んだ金沢。

でも逢川の一言で、振り上げた手を止めた。


俺もはっとするくらい、逢川の声は凛としていた。


「咲良…」

「わたしはダーリンだけだよ。他の人なんて興味ない。…帰るね。また明日ね、ダーリン」


力なく微笑み、軽く手を振った逢川は背を向け去っていく。


「…おい深瀬。おめー女に免疫なさすぎだ」


長く煙草の煙を吐き出し、遠くなっていく逢川の後ろ姿を見ながら、緑川は低く口にした。