こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「─ちっ」


速度を緩めるどころか、後ろを向き立ち止まりかけていた俺は、進行方向に馬鹿三人組がいたことを、目の前に来るまで気付かなかった。


「舌打ちしてんじゃねぇよ」

「またお前らかよ。俺は帰るとこだ。邪魔すんなよ」

「ふ ざ け ん な」

「てめ、離せ!」

「いってぇな!暴れんな!」

「だから離せ!くそが!」

「いてぇ!!このやろ!!」


緑川と金沢に両腕を抑えられ、暴れるも空しく捕まってしまった。逢川から逃げようとしてたのに、なに気をとられてんだ、俺は。


「咲良!」

「え?」


金沢が満面の笑みで声をかける。


くそ、最悪だなこいつら。結局逆戻りかよ…って…。


マジかよ。


遠くの方で、あの二人がラブホに入っていくのが見えた。


俺以外、誰もそのことには気付いていない。


普通夫婦ならわざわざラブホになんて行かねぇよな。しかもこんな真昼間に。ラブホに行かなきゃなんねぇ理由でもあんのか?


その前にあいつら、見た感じ夫婦じゃねぇだろ。


てことは、これってあれだろ?不倫…


「ダーリン!良かった!帰っちゃったかと思った!」