こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「咲良?」

「─え…」


……ん?


少し離れた後方から、小さく聞こえた声。


振り向くと、そこには立ち止まり顔を強ばらせる逢川。向かい側には女連れの男。


逢川が立ち止まったことで、俺は走らなくてもいいと思い速度を緩めた。


それでもいつ追いかけてくるかわからない為、後ろを確認しながら歩く。


「…お父さん」


あ?親父?


あの男、逢川の親父なのか?若ぇな。てことは横にいるのは母親か?もっと若ぇぞ。

後妻…ってよりは、浮気相手のような…。


「今学校の帰りか?」

「うん」

「帰り道はこっちじゃないだろ。友達と遊んでるのか?」

「うん、そうなの」


…なんだ?


相手は親父だってのに、いきなりテンション下がってんじゃねぇか。


怒られてんのか?それとも親父が嫌いなのか?


つーか、あいつの顔、どうしてあんなに…


「コラ、深瀬」