こっち向いて、ダーリン。【改訂版】

「──わ、わわわわ」

「馬鹿だな」

「禁句、忘れたのかよ」

「─っ、深瀬とこうして話すの久しぶりで忘れてたわ。親ネタは禁句だったよな。わり」


赤城と緑川はそこまで馬鹿じゃねぇ。金沢が間抜けすぎる。


暗黙の了解のように、お前らずっと俺の親のことを口に出さなかっただろうが。


──俺が即行でぶちキレるのが、目に見えてるから。


「お前らに付き合ってる程暇じゃねんだよ」


重い空気を残し振り返る。


そうだ、本来なら俺はこうなんだよ。


親の話が軽く出るだけで、条件反射のように頭に血が上り周りが見えなくなる。

血液が逆流してんじゃねぇかってくらいに。


…なのに、逢川にはなんだって自ら口にしてんだよ。


わけわかんねぇ。


自分の言動に、自分自身に、俺はただ無性に腹が立っていた。