──────



「お前、『養子』なんだろ?!」

「─え?」


小学校六年、同じクラスの奴と言い合いになった時だった。


正しいのは俺だ。それは誰もがわかっていた。


言い返す言葉がなくなったこいつは、苦し紛れのように叫んだ。俺にムカついていたせいもあるのだろう。


にしても、あまりの突拍子のなさに、反応ができず固まってしまった。


自分で自分が『養子』だなんて忘れ去っていた。いや、忘れる以前に幼い記憶などないに等しかった。


『養子』の意味すら、よくわかっていなかった。


「俺、知ってんだからな!お前の親は偽物だって!父ちゃんも母ちゃんも血が繋がってねぇんだろ!」


──血が、繋がってない。


ぼんやりとした記憶の中に、あの、施設から連れられた思い出がある。


でも、それは思い出せそうで思い出せない、歯がゆいほどの遠く薄い記憶。


─つーか。


「だから何なんだよ」