大きな車に乗せられ順応できない中、大きな大きな家に着く。


順応できていなかったくせに、庭にある遊具、家の中にあるおもちゃやお菓子、ガキにとって心を惹かれるものが目に飛び込むと、すぐに胸が膨らんでいく。


警戒心など簡単に消え去っていった。




──それからは、幸せとしか言えない日々が続いた。



明るく優しい母親。仕事で忙しくても必ず俺の相手をしてくれる父親。


感じたことのない愛情と幸福。


『お母さん』って、こういうものなんだ。
『お父さん』って、こういうものなんだ。


初めて知る『家族』という関係。

一緒にいるだけで胸が温かくなるような、そんな毎日。


俺は何の疑いもせず、この『家族』を本物だと思っていた。


俺らは『家族』なんだと、信じて疑わなかった。


とめどなく注がれる愛情が、当たり前になっていったから。


これが『家族』以外の何物でもないと、心のどこかで揺るぎなく感じていたから。