「今日からね、三人で同じ家に一緒に住むんだよ」

「なんで?」

「『家族』になったから」



『かぞく』?



「一緒に帰ろうね。お父さんもお母さんも、ずっと圭悟を待ってたんだよ」

「わたし達のお家に帰ろうね」

「園長先生、無理を言って急がせてしまい、お手数をおかけしました」

「お世話になり、ありがとうございました。失礼します」

「いいえ。圭悟くん、元気でね!」


笑って手を振る園長。


わけもわからず手を引かれ、六年を過ごした施設を後にする。


六年前、この施設の前に捨てられていた俺からすれば、二人の言っている意味などわかるわけがなかった。


もちろん親の顔も名前も知らない。


急に現れた他人を『お父さん』『お母さん』なんて、どうやって言えってんだよ。


だいたい、そんなもんの存在すら知らないってのに。