「茜と彼、ぴったりだと思うよ。なんか二人、すごく似てるもん」
わたしは言った。正直な感想だ。彼と茜はたぶん同じ種類の人間で、ふたりともがきらきら輝いていて眩しい。
片思いだと思っているのは茜本人だけで、きっと彼のほうも茜のことが好きなんだろう。
お互いにバスケに熱中しているから、お互いの気持ちに気づいていなくて、だけど周りは、たぶん二人が両思いだと気付く人も多いに違いない。
それでも、わたしは、茜にそのことを伝えることは今はしないでおこうと思った。
茜はたぶん、彼を想う気持ちを糧に頑張っているはずだから。
「ありがとう。葵も、頑張って」
「うん。じゃあね」
「うん。また放課後にでも顔出すね」
そうして、わたしたちはお互いの教室へと別れていった。茜は特進クラス、わたしは普通コース。
教室でいつもの顔ぶれを見つけると、いつもより少し気持ちの良い一日が始まった。



