「そうだね、頑張ってみる」
わたしは頷いた。好きな人とうまくいくために頑張ってみる、というのと、いま自分の口から出た、「頑張ってみる」というのでは、なんとなく意味が違っている気がした。
とりあえず、いまわたしが頑張るべきなのは、シュウに次会う日までに出された課題をきちんとこなすということだ。
シュウと仲良くなるのには、他の男子と仲良くなるためにするように、友達を介して一緒にいられる機会を作ってもらったりだとか、友達を使って連絡先を教えてもらったりだとか、あえて彼を入れたメッセージのグループを作ってもらったりだとか、部活の試合を見に行ったりだとか、さりげなく好意の気持ちを伝えてもらったりだとか、そんなまわりくどいことをしてもたぶんまったく意味はない。
シュウは、そんなことで誰か特定の女の子と仲良くなるような人じゃない。
だからこそ、わたしはこんなにもシュウに惹かれてしまっているんだろう。
「見てみたいな、葵の好きな人」
茜が言った。わたしは即座に「だめだよ」と返す。
「なんでよっ」
「茜は輝き過ぎてるから。彼の前で隣に並ぶ勇気ない」
茜は「なによそれ」と笑ったけれど、わたしは本気そのものだった。
だけど、こんな本音を冗談混じりにでも茜にぶつけられたのは、他でもないシュウのおかげだ。
「女を比較するような男には、葵のことは渡さないよ」
茜がまるで彼氏のようなことを言ったので、わたしも思わず笑った。



