「…なにそれ、かなり謎じゃん…なんで好きになったの?」
「…なんでだろ」
自分でも、よくわからない。
わからないけれど、シュウの前では素直になれる。シュウの声を聞くとほっとする。シュウがそこにいるだけで、わたしはなんだかすごく安心できるのだ。
「まぁでも、葵らしいよね」
茜はそう言って、あははと笑った。
そういえば、茜に好きな人や彼氏っているんだろうか。
こんなにも長い付き合いなのに、そんな話は聞いたことがなかった。
「茜は、いるの?…好きな人」
「いるよ」
即答だった。あまりにあっけらかんと答えた茜にびっくりして顔を見た。
向かい風に吹かれて前髪が全部あがっても、ちっとも崩れない綺麗な横顔は、まるで映画のワンシーンみたいだ。
「いるんだ…」
「片思いだけどね。卒業までには気持ち伝えようと思ってる。葵も頑張りなよ」
ねっ、と微笑んだ茜はやっぱり綺麗で、こんな茜に片思いをさせるのは、いったいどこの罪な男なんだろうと思った。



