今夜、きみを迎えに行く。



食事が終わったあとは食べた食器の後片付け。




食事洗いもまだ慣れなくて、泡だらけになったり水が飛び散ったりもするけれど、母親の隣でわたしがそうしているだけで母親が嬉しそうな顔をしている。そのことがやっぱり嬉しい。



母親は、何も言わなくても茜のぶんのおにぎりを握ってくれていて、美味しそうなお弁当も準備してくれている。



「いってきます」



今日も玄関まで見送ってくれる母親に、ちゃんと目を見ていってきますを言った。



玄関を出ると朝のひんやりとした空気を吸い込んだ。まだ今日はだれも吸っていない、新鮮な空気。



隣の家の前には茜の自転車。チャイムを鳴らそうとすると、やっぱりぴったりのタイミングで出てくる茜。



「おはよう!葵」



「おはよう、茜。わたしが出てくるのわかってたの?」



「まあね、長年の勘ってやつ」



茜はえへへっと笑った。



「はい、おにぎり」



「サンキュー。助かる」



「今日は焼きたらこだったよ」



「やった、最高」



並んで自転車をこぎ始める。



いつもなら、まだ目覚めきっていない気だるい時間帯のはずだけど、早起きしたおかげで体はしゃきっとしているし、朝ごはんをしっかり食べたおかげで全身に力がみなぎっている。