「お母さん、いってきます」
母親の作ってくれたおにぎりとお弁当を通学バッグに詰め込んで、玄関に立つ。
いつもは朝ごはんの途中で黙って飛び出していたりしたから、こんなふうに玄関まで母親に見送ってもらうのも久しぶり。
「葵、いってらっしゃい」
笑顔が、少しくすぐったい。
一時間早起きして、庭掃除をして、食べた食器を洗って、ありがとう、と言っただけ。
たったそれだけのことなのに、いつもと同じ朝がこんなにも違って見えるなんて。
やっぱり、シュウの課題、恐るべし。
母親に見送られながら玄関のドアを開ける。
空気もなんだか清々しい。
茜の家のチャイムを押そうとすると、ぴったりのタイミングで茜が出て来る。
「おはよう、葵」
「茜、おはよう。はいこれ、お母さん、おにぎり作ってくれたから食べて」
「ありがとう、葵。部活あるしお腹すくんだよね。超助かる」
茜の笑顔。並んで自転車をこぎ始めると、爽やかな朝の風がほっぺたをくすぐって気持ちがいい。



