「仲直りしたの?茜と」
鮭のおにぎりを握りながら、母親がいった。
「うん、まぁ、ね」
食器をカチャカチャと洗いながらわたし。慣れない食器洗いでシンクに水が飛び散る。
こんなふうに、母親とキッチンに並んで立つのは初めてのことで、なんだか少し緊張する。
「お母さんはね」
「えっなに」
「お母さんはね、茜のことが大切よ。でもそれは、美代ちゃんのことが大切だからなの」
母親はおにぎりを小さなお弁当箱に詰めている。美代ちゃんというのは茜のお母さんのことだ。茜のお母さんの名前は美代子。茜にそっくりな美人。
「お母さんは、隣に美代ちゃんがいたから頑張って来られたの。結婚して子育てをするって、すごく大変で辛いときもあるのよ。だけどね、美代ちゃんがいたから今までやってこられた。お母さんと美代ちゃんとはお互いにママ一年生で、すごく話が合ってね。だからずっと一緒に励まし合ってきた。ここに住んで良かったって、美代ちゃんのおかげでそう思えたのよ」
母親は、懐かしそうに遠くを見るような顔で言った。
「お母さんにも、悩んでるときがあったんだ…」
思わず呟いてしまう。母親は、ふふっと笑う。
「今でも、悩み事ばっかりよ」
母親が、わたしの隣で笑っている。
こんなふうに、母親と笑い合えたのはいつぶりだろう。
皺の増えた横顔は、なんとなくいつもとは違って見えた。



