「まずひとつ目、これから一週間、毎日いつもより一時間早く起きること」
「一時間?!やだよそんなの」
わたしは思わず叫んでいた。意味がわからない。なんで早起きしないといけないの。
「だめだめ。この課題は全部きちんとこなしてこそ意味があるんだから」
「一時間も早く起きるなんてそんなの拷問だよ…」
シュウはわたしの文句には耳も貸さない。ふふふ、と笑って話を続ける。
「ふたつ目、毎朝、庭の掃除をすること」
「なんで?!わたし、お寺の修行に行くみたいじゃん」
シュウはわたしの文句は無視して、三本目の指を立てる。細くて長くて、綺麗な指先。
「みっつ目、自分の食べた食器は自分で洗う。お風呂に入ったあと、お風呂の掃除をする。台所の掃除をする」
「待って、みっつ目が多くない?これで五つじゃないの?」
「だめだめ。これはワンセット。食器洗いと風呂掃除と台所の掃除」
「なんか掃除ばっかりじゃん。ほんとにこんな課題意味あるの」
「意味があるかどうかは、やってみてからレポートで教えてもらおうかな。あ、レポートは口頭で構わないからね」
「よっつ目」とシュウは四本目の指を立てて見せる。なんだか既に辛くなってきた。こんなこと、本当に出来るんだろうか。
「まだあるの」
「これが最後。よっつ目、毎日必ず、誰かにありがとうと言うこと。そのとき、相手の目をちゃんと見ること」
シュウがわたしの目を見詰める。「ありがとう」シュウがそう言って笑う。
「え、なにが」
「美味しいココアをありがとう。はい、リピート、アフターミー」
「あ…、ありがとう」
「はい、よくできました」
シュウがすっと立ち上がる。長い腕が伸びてきて、カウンターごしに手のひらで、わたしの髪をそっと撫でる。
見上げると、シュウは想像していたよりもずっと背が高かった。
「一週間後、また来るよ」
わたしは黙って頷いた。シュウの手のひらのぬくもりがあたたかくて、胸がどきどきと鳴っていた。



