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「シュウの言った通りだった」
放課後。
いつもの通り、喫茶ブランカに出勤して来ると、ライブが近いらしいトミーさんは、わたしが来るなり「ごめん、葵、ちょっと打ち合わせに行ってくるよ」とだけ言い残し、慌てた様子ですぐに店を出ていった。
トミーさんが店を留守にすると、それとほとんど入れ違いにシュウがやって来た。
シュウの飲むココアにいれるミルクを小鍋であたためながらわたしがいうと、シュウはにっこりと笑った。
「迎えに行けたんだね、幼なじみの友達のこと」
「わたし、なんにも知らなかった。茜のこと。茜があんな風にずっと悩んでいたなんて、思ってもみなかった。完璧な茜に、悩みなんてあるはずないと思ってた。わたし、茜に甘えてたんだと思う」
茜の顔を思い出すと、なんだか泣きそうな気持ちになった。
それは、目の前にシュウがいるからなのかもしれなかった。
シュウなら、わたしが泣いても怒っても、まるごと包み込んでくれそうな気がしたから。
「大切なひとのこと、知ろうとすることは大事だよ。家族も同じ」
シュウはいった。わたしは「家族」という言葉にどきっとする。
「幼なじみとの問題は、解決したみたいだね。じゃあ次は、きみときみの家族のあいだの問題を解決する番だ」
シュウの目の前に、熱々のココアのカップを置いた。
「解決するっていったって…」
わたしが口をつぐむと、シュウは「大丈夫」と言ってココアのカップに口を付ける。
シュウが大丈夫というと、本当になんでも大丈夫なのかもしれないという気持ちになってしまうから不思議だ。



