「葵が謝ることじゃないじゃん。黙ってたのは、わたしなんだし。葵のお母さんはね、わたしの第二のお母さんだった。うちの親が、離婚の話のせいで心の病気になってから、まともに朝御飯も作れなくなったこと、葵のお母さんは知ってたから。だから、いつでもご飯食べに来てっていつも言ってくれてたんだ。それでも、ちょっと甘えすぎたかなって反省してる」
反省なんて、しなくていい。わたしはぶんぶんと首を横に振っていた。
「ごめんね、葵。わたし、葵のこと、傷つけてるの、ちっとも気付かなかった」
茜がいった。
綺麗な茜、なんでも出来る、お姉さんみたいな自慢の幼なじみ。大好きな、たったひとりの大切な友達。
「茜……、わたし……」
それ以上はもう、言葉になんてならなかった。
わたしは茜のことが好きで、茜がいなきゃなんにも出来ない。
茜はわたしの、大切なひと。
あまりにも強い向かい風に、茜が笑った。
「だめだ、ぜんっぜん進まない…!」
茜の立ちこぎを追いかけて、わたしも思いきり自転車をこいでいた。



