今夜、きみを迎えに行く。





トミーさんが出掛けると、さっきジローさんが使っていたカップとソーサーを洗った。

ぴかぴかに磨いて、棚に並べて、お砂糖やミルクを補充した。

カウンターテーブルも艶々に磨き上げて、床のモップがけ。グランドピアノも専用クリームを使って乾いた柔らかい布で磨くと、黒い宝石みたいに輝きを取り戻した。



吊り下げタイプの観葉植物にお水をやって、艶々のカウンターテーブルを眺めると、なんとなく、シュウがやって来るような予感がした。

シュウが座っていた、左から三番目の席。その場所だけが、なんだか少し特別なものに思える。



自分の分と一緒に、シュウがいつ来ても良いように、カップをふたつ並べてココアパウダーを準備した。

小鍋にミルクをあたためる。それも二人分。



期待しているわけじゃない。シュウが来なかったとしても、ひとりで二杯飲めば良いだけのことだ。



そんな苦しい言い訳で自分自身を慰めながら、ひそかにシュウが来てくれるのを待ち焦がれている自分がいる。



シュウとは一度会って少し話しただけの関係で、また来ると言ったシュウの言葉が、本心なのかどうかもわからないのに。