「飲みなよ。飲もうとしてたんだろ」
「え、あ、はい。いただきます」
彼に促されて、彼と一緒にココアを飲んだ。
なんだか不思議な空間だ。お客さんと、向かい合ってココアを飲んでいる。
甘くてあたたかくて、優しい味。
「ぼくはシュウ。きみの悩みはなに」
彼がいった。
ずいぶんおかしな質問だ。と思った。最初に自分の名前を名乗ったら、次はまず、わたしの名前を聞くのが普通の流れだと思うのだけれど。
「あの、わたしの悩みなんて聞いてどうするんですか」
「うーん、そうだな…。解決するように協力する」
やっぱり、変な人。
シュウ、と名乗った彼はいかにも育ちが良くて、好青年で、透明感が半端じゃない。
でもひょっとして、それは作り上げられた見た目で、このまま何らかの勧誘をされたりとか、謎の壺を売り付けられたりとか、するんじゃないだろうか。
「悩みなんて、ないですから」
お客さんに対しては愛想のない答えかもしれない。でも、怪しいセールスマンやインチキ占い師に対しての答えならこれが正解だ。



