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「今日は葵に紹介したい人がいてね。もうすぐ来ると思うんだが」
トミーさんが古い壁掛け時計を見ながら言った。
今日店にいるのはトミーさんの他に、ジローさん、サックスのワタリさん、ドラムの三郎さん、トロンボーンの譲二さんの四人。
みんなそれぞれに個性のあるお洒落な人たちで、全員が還暦を過ぎたおじいちゃんであるにも関わらず、メンバーが揃うと圧倒的なオーラが漂っている。
「紹介したい人、ですか?」
「ああ。うちの新しいメンバーだ。まだ若いが、腕は確かだ。オーディションでも飛び抜けて上手かったんだよ」
トミーさんが嬉しそうに言った。
他のメンバーもうんうんと頷いている。
「ギター担当の奴が、検査入院することになってね。それで急遽代役を立てたって訳だ。まぁこの歳になりゃ、仕方ないがね」
ジローさんがはっはっはと笑う。
「俺らもいつ入院するかわからないしなぁ」
と三郎さんも笑う。
「世代交代も必要だし、若手を育成する意味も込めて、あえて若いのを採用したんだよ」



