封筒には一枚だけ、白い便箋が入っていた。
縦書きの、シンプルな便箋に、綺麗な文字で綴られたその文字は、やっぱりおじいちゃんの文字にそっくりだ。
葵へ
あれからもう、一年が過ぎているはずだ。
どうだろう。きみの家族は仲良くやっているだろうか。
きみは、何か将来の夢を見つけただろうか。
僕はそれだけが気掛かりでならない。
あの日、僕がきみの前に現れた日だ。
僕は本当なら、あの日、きみのおばあちゃんでもあり、僕の世界一大切な人である彼女を、迎えに行く予定だったんだ。
だけどね、きみのおばあちゃん、彼女が、それを拒んだんだよ。
このままじゃ、安心して天国へ行けない、とね。
僕は悩んだ。そして、彼女に聞いたんだ。じゃあ、どうすればいいんだと。
すると、彼女は言った。
葵のことが心配だ、とね。
僕は彼女に約束をした。
葵と家族の問題を解決してから、また迎えに来ると。
そして、僕はきみの前に現れた。
きみは彼女に似て、根は真面目だからね。
僕の課題を真面目にこなした。そして、家族の絆を取り戻した。幼なじみとの関係も。自分のことも見つめ直すことができたはずだ。
きみはとても偉かった。嬉しかったよ。
そして約束の一週間。
僕もきみと別れるのは寂しかった。だけどね、僕はきみと、またいつか必ず会えると知っているから。
そして、僕は約束した通り、彼女を迎えに行ったんだ。
今度は彼女は頷いてくれたよ。
葵。
きみは僕と、彼女の大切な宝物だ。
いつまでも、見守っている。
いつか、僕のかわりにきみを守ってくれる男が現れることを願っているよ。
シュウ



