「…なんですか?!急に声出すからびっくりするじゃないですか!」
トミーさんに向かって言うと、「ごめんごめん」とトミーさん。
慌てた様子で脚立に乗って、店の戸棚をがさごそと漁りはじめる。
「何してるんですか?」
不思議に思ってたずねると、トミーさんは「ああ、ええと、たしかこのあたりに…」と戸棚の奥に手を伸ばす。
「おお、あったあった!忘れるところだった」
トミーさんが取り出したのは、一枚の白い封筒みたいなものだった。
「なんですか?それ…」
「これ、預かっていたんだよ、ほら、あの去年あたり、よく店に来てた彼から」
「…えっ?」
「葵宛だよ。一年くらい経った頃に渡してくれって頼まれて、忘れるところだったよ…。物忘れなんて、もうじいさんだな、俺も」
トミーさんは、はははと笑って言った。わたしはたずねる。
「あの、誰からですか…?」
一年前、よく店に来ていた彼。
それはもう、たぶんひとりしかいないけれど。
「シュウ、って言っただろ、確か。ほら、葵と同じくらいの若い子だよ」
胸の奥でズキン、と震動がした。
シュウ。
シュウからなの…?
「忘れなくて良かったよ」
トミーさんが脚立から降りて、その封筒をわたしに差し出した。
戸棚の中で少し汚れた白い封筒。
わたしは少し震える手で、それを受け取った。



