朝の日課になった庭の手入れのおかげで、毎朝お腹はぺこぺこだ。今では朝食の準備も手伝うようになった。わたしは人数分のお味噌汁やご飯を並べていく。お父さんとお母さん、わたし、それにもう一人。



「おじゃましまぁーす!」



ちょうど準備も整った頃、元気な声が玄関から聞こえてくる。



「おはよう、茜」



「おはよう、葵、おじさん、おばさん」



食卓に全員が集まると、みんな揃って朝ごはんを食べ始める。


お父さん、お母さん、茜、そしてわたし。



「茜は、寮に引っ越す準備はもう出来たのか?」



お父さんが茜にたずねると、茜は味噌汁をすすって「うん」と頷いた。



「そんなに荷物もないの。向こうには、ベッドやポットなんかも揃ってるし、毎日、寮の食事があるから料理の道具なんかもいらないみたい」



「それはいいわね」



とお母さん。もうすぐ卒業が迫っている。茜はM大学への進学が決定しているから、引っ越しの準備なんかで忙しそうだ。



「葵は、専門学校だよね」



茜が言った。「うん、そう」とわたしは答える。
悩んだ挙げ句、大学ではなく専門学校に進学する道を選んだ。卒業後は製菓の専門学校に通いながら、喫茶ブランカでのアルバイトを続けるつもりだ。

初めてパウンドケーキを作って以来、めっきりお菓子作りにはまってしまったわたしは、お菓子作りを仕事にしたいと考えるようになり、両親を説得して専門学校への進学を決めた。
いずれは、店でお客さんに出せるようなお菓子を作りたいと思っている。