わたしは小さな引き出しの、二段目を開けてみる。
指先を黒いわっかにかけて、ゆっくりと引く。
中に入っていたのは、黒い革の財布とセピア色の写真が一枚。
古い財布にも見覚えがあった。おじいちゃんが使っていた財布。これもおじいちゃんの形見だ。それと一緒に入っていた、セピア色の一枚の写真。
そこに写っていたのは肩までの髪にくるりとパーマをかけて、ノースリーブのワンピースを着た、若くて可愛い女の子。
その隣にいるのは、半袖のシャツと細身の長ズボンをはいて、可愛い女の子の肩に手をまわしている綺麗な顔の青年。
写真が古くて見づらいけれど、その青年は、間違いなくシュウだった。
「シュウ…?なんで…?」
写真を見詰めながら思わず呟いたわたしの隣で、母親が「あら」と言って笑った。
「これ、おばあちゃんとおじいちゃんの若い頃の写真よ。まだふたりとも、十代じゃないかしら。こんな写真、おばあちゃんまだ持ってたのね」
写真の中で笑うシュウと、隣で微笑む女の子。
これが、おじいちゃんと、おばあちゃん?
「お母さん…嘘でしょ?」
わたしが震える声でたずねると、母親は笑った。
「本当よ。おばあちゃん、あれでも若い頃はすごくモテたのよ。おじいちゃんだって、すごく格好よかったらしいわよ」
頭の中が混乱して、訳がわからなくなる。
本当に、本当に、シュウは若い頃のおじいちゃんとそっくり、なんだろうか。
そっくりなだけ?懐中時計も、ラベンダーの香りも、ただの偶然?



