「おばあちゃん…ごめんね…」
わたしのために、似合わない真っ赤な口紅を塗ってくれたおばあちゃん。
わたしのために、怒ってくれたおばあちゃん。
今は薄紫色の唇をそっと指でなぞると、おばあちゃんはわたしを見て目を細めた。
「おばあちゃん…ありがとう」
もっとたくさん、おばあちゃんにありがとうと言っておけばよかった。
もっとたくさん、おばあちゃんの喜ぶことをしてあげればよかった。
「おばあちゃん…おばあちゃん…」
わたしのそばで、母親も泣いていた。いつのまにか、父親もそこにいて、やっぱり泣いていた。
日が暮れて、夜になっても、そのままわたしたち家族はそこにいて、かわるがわるおばあちゃんの手を握っていた。
そして、朝が来る前に、おばあちゃんは眠るように天国へ行った。苦しそうな顔はしていなくて、最後は少し笑ってどこか幸せそうな顔をしていたと思う。



