「──そんなに瀬戸さんの事泣かせるのが楽しい?」




移動して、いきなりそんな事を言われ俺の思考は停止する。


可鈴を……泣かせる……?




「悪いけど、何を言ってるのか分かん──」




そこまで言った所で、俺は急に胸ぐらを掴まれた。

まさかの出来事に、相手の手を掴むことしか出来ない。


桐谷の腕はプルプルと震えているが、目は冷静さを物語っている。





「とぼけたこと言ってんじゃねぇぞ?お前が嘘ついて、瀬戸さんの想いを弄んだんだろ。そんなに女を騙すのが楽しいか?自分の美貌で、相手を騙すのが楽しいのか……!?」




そういう事か。

俺が、告白の事を嘘ついたから……。


可鈴も可鈴なりに傷ついてたんだな。

そうだよな。




「……楽しいと思ってやった訳じゃない。でも……俺も俺なりに考えたんだ。どうすれば、可鈴に少しでも負担がかからないか、迷惑をかけないか。」



「考えた末であの結末か……?笑わせんなよ。」



「それが可鈴の為だと思ったんだ。それに……今の可鈴にはお前がいるだろ。」




「……は?」