「──じゃあこの問題を……瀬戸さん。答えて。」


「……へっ……!?」


思わず固まる私。ニッコリとした表情の、数学教師。冷や汗が垂れるのが分かる。

某市立高校の2年生の私、瀬戸可鈴。これといって取り柄のない私。そして、中でも数学が大の苦手な私。
私は、先生の方を見るとヘラッと笑う。

フラフラと歩き始めると、黒板へと向かう。ああ……無理だよ。分かんないよ。辛いよ……。


「どうしたの?瀬戸さん。授業聞いてたら答えられる問題だよ?」


そう言って、またまた笑う数学教師。
私もつられて笑う。



「……いや~……分かりませんねぇ~……。」


私が、そう言った瞬間、「ブフッ!!」と噴き出す声が聞こえた。
私は、すぐさまその方向に視線を向ける。

そこには、皆の王子さま、幸坂直登さまが座っていらっしゃった。



「幸坂くん。どうかしましたか?」



数学教師は、眼鏡の奥をキラリと光らせて、直登の事を睨み付ける。

この数学教師、何か直登の事毛嫌いしてるよね。イケメンでモテるからかな?

そして、私が数学が大の苦手だって事を知ってて、問題を解かせるのもいつも私を狙ってくる。まあ、一癖ある教師だって事だよね。

私が、うんうんと頷いた時、直登が立ち上がる。

そして、気づけば私の隣に立っていた。