「──え!?ちょっ、ええっ!?」



目の前に立っているのは、井上凪沙。

彼女は、ダブルの意味で驚いているのだろう。

まずは、親友である瀬戸可鈴が泣いていること、もう一つは、俺、幸坂直登に話しかけられていること。


しかし、今はそんな彼女の戸惑いなど気にしていられない。今は、彼女に頼るしか無いのだ。




「……ごめん。話聞いてあげてくれない?」




「へっ!?あっ、え、も、もちろんですっ!!!」



かなりの挙動不審だが、いつもなら逃げる彼女が逃げなかった事を認めて、早めにこの場を立ち去ることにしよう。


彼女と、可鈴の為だ。


俺は、「よろしくね。」と言い残し、すぐに教室から出て行った。



そして、足早にある場所へと向かう。


目的地はただ一つ。アイツの所だ。