「シャル様。差し出がましいようですが、私の恋模様を探るより先にあなたにはお考えにならなければならないことがありますよ」
「……ハロルドのことか……」
「ええ。彼についてあまり良い噂を聞きません。ハロルド様は昔からシャル様を敵対視しておられます」
「あいつ、まだあのことを根に持っているのか?時間が解決すると気楽に考えていたが、そういうわけにもいかないか……。ったく、頭の痛くなる存在だ……」
「私もできる限りこれ以上問題が起きないよう対処いたしますが、恐らくあの方の目的はシャル様の王位失脚……。隙あらばシャル様の失態を追及しようとするでしょう。あなたの立ち回り方ひとつでこの国の命運が分かれます。どうか、そのことを……」
「分かっている」
ルイスの言葉を最後まで聞かず、シャルは席を立った。
「今までは適当に無視してきたが、これからはそうもいかないだろう。俺の結婚話を知ったら、ハロルドは何かしらアクションを起こすはずだ。でもな、いくら相手がハロルドだろうと、あいなとの結婚を邪魔させはしない」
「ええ、その意気ですよ」
「あいなの所に行ってくる」
「まだ執務の途中ですよ」
軽くたしなめたが、ここでルイスの言葉をすんなり聞き入れるほどシャルは素直ではない。
「アイツの夫になるのならなおさら仕事も大事だ。でもな、今はアイツのことを気にかけてやりたい。今、ここでアイツを支えてやれるのは俺しかいないから」
「そうですね。分かりました。出来るだけ早く戻って下さいね。ただでさえ、最近シャル様は仕事を放置し過ぎて、こちらにまでしわ寄せが来ているのですから。尻拭いをしたくないという意味ではありません。シャル様の今後のためにも、仕事はしっかりやりとげて頂きたいと私は……」
「分かった分かった。何回目だよそのセリフ。ったく。それだけ同じこと言えるなんて、逆に感心するよ。あいなが来る前はもっと従順だったのに……。最近のお前は口うるさいお袋みたいな執事に進化したな」
「男なのに母親ですか?矛盾していますね、その例え方は」
「細かいことうるさいぞっ。そこは会話の流れから何となく理解してくれ。俺も、あいなの顔を見たら出来るだけ早く戻る!」

