「エトリアの力って何?」
「この指輪の…正確には、この青い石に、先祖エトリアの魔力が込められている。これは、夫が妻に、妻が夫に与える害を完全に無効化するための魔力だ。よって、俺はお前に危害を加えられないし、お前も俺に暴力を振るうことはできない」
「暴力じゃなくて正当防衛だし!にしても、エトリアの力…おそるべし……」
(だから、コイツと初めて会った時も、私は全く抵抗できなかったんだ。お互いに指輪をしていたから……。)
あの時は気付かなかったが、シャルも自分と同じ指輪をしているということに、あいなは気恥ずかしいような場違いなような、よく分からない気分になった。彼女はため息をつき、げんなりする。
「これをつけてる以上、私はアンタにビンタすることすらできないんだね」
「お前は本当に品のない女だな。まあいい。わかっていたことだ」
「は?」
「何でもない。
エトリアの魔力がもたらす効果は他にもある。妻の身を守り、手助けをする力も秘められているんだ」
「不本意な結婚でも、そういうプラスの力までもが働くってわけ?チグハグな魔力だね」
あいなは投げやりに言った。

