内線を切り、あいなは両手を頬に当てた。
(ルイスさんの声、なんかドキドキする。)
正確に言うと声ではない。言われた言葉、その内容に、あいなはドキドキしていたのだ。
片想いの経験では味わえなかった、異性に大切にされる感覚というものを初めて知った気がする。
(分かってるよ。ルイスさんはそういう人だもん。執事だし、シャルにとって都合よく物事が動くように、ああ言ってるだけだよっ!)
あいなは、ルイスにときめいてしまった自分を否定した。
(でも、なんか、いいかも、こういうの……。)
次の瞬間には、頭の中がカラフルな花で満たされたような、柔らかい心地になる。
(こういうの、漫画やアニメでしか疑似体験できないと思ってた……。ああ、非モテの私にもあんな男っぽくて優しい言葉をかけてくれる男の人、いるんだなぁ。)
フワフワ、夢見心地である。
「不愉快な顔だな」
「はっ!」
乙女心満開モードも、部屋に訪れた一人の声であっけなく崩れ去る。
そこには、王族であることを示す正装で腕組みをするシャルがいた。しかも、今の彼はものすごく機嫌が悪そうである。

